インドの貧しい村に生まれたバルラム・ハルワイ。
裕福な家の運転手として働きだし、次第に主人からの信頼を得ていく。
しかし、ある事件が起き、雇い主の家族らが、自分に罪をかぶせようとしたことで
いつしか危険な野心が芽生えてくる。
以下ネタバレあり
原作:アラヴィンド・アディガのベストセラー小説
「グローバリズム出づる処の殺人者より」
2008年度ブッカー賞受賞作品(イギリスで最も優れた本に送られる賞)
中国の温家宝首相が、インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールを訪れると
知った主人公が、首相宛に書いた手紙として物語が始まっていく。
【映画 ロケーション】
主人公の実家の場所は、さすがにわかりませんでしたが
ニューデリーになってからは、名所がチラチラと映っていました。
鉄道の横の大きな赤い(工事中の)像は、ハヌマーン寺院のハヌマーンの巨像です。
インド神話の神猿で、孫悟空のモデルでは?とも言われています。
Statesman House (ニューデリーのランドマーク的建物)
THE STATESMANという日刊紙を出版する新聞社所有のオフィスビル。
滞在先:M3M Golf Estate
運転手らは、ビルの地下駐車場の一角で寝泊まりしていた。
大臣に賄賂を渡した帰り道:ガンディーの塩の行進の像
(バルラム成り上がりストーリー)
①故郷の村を脱出
貧しい村に生まれ、バルラムの家も当然貧乏。
父は、稼ぎのほとんどを地主に巻き上げられていた。
優秀なバルラムは、学校の先生からデリーの学校へ行けるように奨学金の手配を
すると言われたが、進学せず家のために働けと命じられてしまう。
父親は結核になり、数日後に死亡。
ある日、アメリカ帰りの地主の次男アショクを見た瞬間、この人が自分の主人だと
思い、アショクの運転手になることを目標に村を出る。
②直談判
ダーンバードで運転を習い、ドライバーの経験を積んだ後、
アショクの屋敷へ出向き、運転手として雇ってほしいと必死の自己アピール。
どうにか第2ドライバーとして雇ってもらう。
③第1ドライバに昇格
第1ドライバーの男性が、ムスリムであることを内緒にしていたことを知り
彼を脅迫し、屋敷から追い出すことに成功。
バルラムは第1ドライバーとなり、アショクと妻ピンキーと共にニューデリーへ。
④事故の罪を被らされる
ピンキーの誕生日の夜、酔ったピンキーが運転をし、ひき逃げ事件を起こす。
その後、アショクの家族に呼び出され、バルラムは自分が事故を起こしたと
嘘の供述書にサインをさせられてしまう。
彼らは、バルラムの家族にも既に話をつけており、バルラムが断れない状況を
作っていた。目撃者が出なかったため、彼が罪をかぶる必要はなくなったが
アショクの兄は、供述書をたてにバルラムを脅すようになる。
⑤ピンキー、アメリカへ
インドでの生活に嫌気がさしたピンキーは、夫アショクに黙ってアメリカに帰国。
アショクはショックを受け、自暴自棄になり、バルラムが彼をサポートしていく。
⑥裏金作り
ひき逃げ事件で無実の罪を被せられそうになったことで
アショクらへの恨みからか、罪の意識無く、金儲けに走るバルラム。
・水増しした修理代の請求書を渡し、差額を得る。
・アショクの車のガソリンを売る。
・街で流しのドライバーを始める。
⑦クビの予感
ある夜、渋滞にはまっている時に、つい小銭を恵んだバルラム。
アショクと兄に注意され、すぐに謝罪するが、アショクの兄はバルラムを
クビにしようとする。
⑧父の幻覚
運転中、亡くなったはずの父が現れる。
「あの金を盗んでも罪にはならない。アショク様は税金を逃れようとしている。
彼は誰から盗んでる?庶民からだ。」
⑨新しいドライバー
甥っ子がバルラムのもとに現れる。
アショクは初めて丸1日休みをくれたが、
実は、彼のもとに新しいドライバーが訪ねてきていた。
⑩アショク殺害
雨の夜、賄賂のための大金を持ったアショクを車外に誘い出し、
割れた瓶で刺殺し、お金を奪い逃走。
甥を連れ、4週間引きこもり、平常心を取り戻す。
⑪ビジネスでの成功
インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールで、アメリカへのコールセンター
で働く社員のための送迎ビジネスを始めようと考えたバルラム。
アショク達のやり方を真似て、警察署長へ賄賂を渡し、ライバルを蹴落とし
WHEITE TIGER DRIVERSという配送サービスの会社を立ち上げる。
指名手配を受けているため、アショクという偽名を使う。
ビジネスは成功し、アショクから奪ったお金の倍の資産を得る。
インドに根強くのこるカースト制度。
自分たちの状況を疑うことなく、受け入れてしまう貧乏な人々。
そこから成り上がるには、犯罪or政治、と語る主人公。
アショクのお金を強奪して、成功を収めている様子を見て、つい
スカッとしてしまった自分がいた。
ラストで、インド北部の村での虐殺事件が載った新聞を読んでいる場面があったが
あれはやはりバルラムの家族が、復讐のために殺害されたということなのだろうか?
マングースはやりかねないだろう。
最後の、
「白(人)は落ち目、これからは茶色(インド)や黄色(中国)の時代だ。」
という強烈なメッセージが突き刺さった。