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時の面影 The Dig (2021)

The Dig: A Novel Based on True Events (English Edition)

第二次世界大戦が迫るイギリス。
裕福な未亡人エディス・プリティは、彼女が所有する土地にある墳丘墓の発掘のために、アマチュアの考古学者バジル・ブラウンを雇い、発掘作業が始まる。
やがて、彼は世紀の大発見である、アングロサクソン時代の船葬墓”サットン・フー”を発掘する。

以下ネタバレあり

 

The Dig, Large Print

原作は、2007年5月に出版されたジョン・プレストンの歴史小説「THE DIG」。
1939年、英国サフォーク州サットン・フーで行われたアングロサクソン船の埋葬発掘調査をベースにした作品で、事実とは異なる点もある。

 

サットン・フー Wikipediaより抜粋

1939年、英国東部イースト・アングリアのサフォーク州ウッドブリッジ近郊で発見された7世紀アングロサクソン時代の船葬墓。
中世初期のイングランドを知るうえで極めて重要な考古学的資料で、最も著名なイギリスの考古遺跡のひとつ。
出土した多数の副葬品は、大英博物館に展示され、豪華な金銀の装飾品や武具武器などがある。
627年死去したイースト・アングリア王レッドウォールドの墓ではないかと推定。
墓域は1998年からナショナル・トラストの管理に。

 

現在は、ナショナル・トラストが管理しており、現地にはサットン・フーのエキシビション・ホールがあり、レプリカが展示されている。
正面の建物の入り口に掲げられているのは、有名なヘルメットの大きなオブジェ。
アングロ・サクソン時代の木造船も復元されている。

 

事実とは違うフィクションの部分があり、Rory Lomaxは架空の人物で、実際に現場の写真を撮ったのは、Mercie Lack と Barbara Wagstaffというアマチュアのカメラマン。地元の教師だという。

 

(ストーリー)

1939年、サフォークの地主のエディス・プリティは、彼女の農地にある墳丘墓の発掘のため、地元のアマチュア考古学者バジル・ブラウンを雇う。
ブラウンは、地元イプスウィッチ博物館の考古学者たちに、バイキング時代ではなく、アングロサクソン時代ではないか言うが、彼らは学歴のないブラウンの考えを一蹴する。

ブラウンは、発掘のために長期滞在し、エディスや彼女の息子のロバートと親しくなっていく。

ブラウンが、船に使われた鉄製のリベット(ねじ)を発見したことで、この墳丘墓が、王族等の位の高い人物の墓であると判明する。
すぐに地元の考古学者が掘削に参加しようとするが、エディスに断られ、エディスはいとこのロリー・ロマックスにブラウンを手伝うよう依頼する。
しかし、大発見のニュースはすぐに国内に広まり、ケンブリッジの考古学者であるチャールズ・フィリップスが現れ、国家的に重要な発見だと言い、The Office of Works(英国の省庁)の管轄の発掘となり、発見者であるブラウンが追い出されそうになる。

しかし、土地の所有者であるエディスからの依頼で、ブラウンも掘削に加わることになり、後にトレミシス金貨を発見する。
金貨が発見されたことで、フィリップスは、アングロサクソン人たちには高度な技術があり、社会集団としての国家が形成されていたことが判明したと大喜びし、アングロサクソン人に関する歴史が書き換えるほどの大発見だと称えた。

フィリップは、お宝を全て大英博物館に送り、研究しようと考えていたが、エディスは、開戦間近の首都ロンドンで保管することを心配し、一旦は自分の家に保管するよう命令する。

フィリップの掘削チームの一員であるピゴット夫妻。
新婚旅行中に、夫がフィリップに呼び出され、夫婦ともに掘削チームに参加する。
しかし、実は夫フィリップは同性愛者で、偽装のために妻ペギーと結婚しており、夜の営みも無い様子。(ペギーの名前を間違えて呼ぶシーンも。)
ペギーは薄々気づきながらも、何も言えずにいたが、掘削現場でロリーと出会い、2人は恋に落ちる。
戦争がはじまり、ロリーが徴兵されることになり、出征の前日に2人は関係を持つ。
ペギーは、夫と離婚することを決める。

その後、病気が悪化したエディスは、宝を全て大英博物館に寄付することを決め、代わりに、発見者としてブラウンの名前を刻むよう依頼する。
1942年、エディス逝去。

サットン・フーの宝は、戦争中にロンドンの地下鉄に隠され、難を逃れる。
エディスの死後9年後、バジル・ブラウンの名前が記載されないまま、大英博物館に初めて展示される。
最近になり、ようやくバジル・ブラウンの功績が認められ、彼の名とエディス・プリティの名も大英博物館にて掲示されている。
~ fin ~

 

英語版ウィキペディアより二人の経歴を簡単に紹介。

 (エディス・プリティ)
1883年8月1日~1942年12月17日
実家は、ガス機器製造から財を成した裕福な実業家。
1926年、フランク・プリティと結婚。
結婚後、サットン・フー・ハウスを含む526エーカーのサットン・フー ・エステートを購入。(ちなみに東京ドームは、11.5エーカー。)
1930年、長男ロバート・デンプスター・プリティを出産。
1934年、夫フランクは胃癌のため、56歳で逝去。
1939年、発掘開始。
1942年12月17日、脳卒中のため逝去。(57歳)

(バジル・ブラウン)

1888年1月22日-1977年3月12日
1888年イプスウィッチの東にあるバックルシャムで誕生。
12歳で学校卒業後、父の農場を手伝いはじめ、夜間学校で勉強を続ける。
1907年、天文学、地理学、地質学等の卒業証書を取得
(独学で、ラテン語とフランス語を習得。ギリシャ語、ドイツ語、スペイン語も。)
1923年6月27日、ドロシー・メイ・オールドフィールドと結婚。
保険代理店と特別巡査の仕事をしながら、天文学の研究や、低賃金の遺跡調査の仕事もはじめる。
1938年6月~8月 サットン・フー掘削→世紀の大発見!
1939年5月~8月 実際にはサットン・フーの掘削は2回に分けられていた。
戦争中は、軍関連の仕事に従事。戦争後は、イプスウィッチ博物館に採用される。
1961年、イプスウイッチ博物館退職するが、発掘調査は続ける。
1965年、ブルームヒルズの発掘調査中、病に倒れ、引退。
1977年3月12日、肺炎で逝去。

 

映画としても素晴らしい内容だった。
事実ではないが、ペギーとロリーの恋も切なくて良かった。
雨の中、夫が男性の同僚と楽しそうにはしゃぐ姿を見て、何かに気づいたペギーの表情が何とも言えなかった。
ペギー役には、Netflix作品でお馴染みのリリー・ジェームズ。売れっ子。
主人公のバジル・ブラウンは、レイフ・ファインズ
はじめは、レイフ・ファインズに少し似たお爺さんだと思っていました。
お勧めします。
10点満点中、9点!