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9人の翻訳家 囚われたベストセラー Les Traducteurs The Translators (2019)

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(字幕版)

フランスの人里離れた場所にある洋館。
世界的なベストセラー小説の「デダリュス」の完結編を世界同時出版するため、出版社オーナーのアングストロームによって集められた9か国の翻訳家たち。
洋館の地下に作られた、豪華ではあるが、要塞のような密室に閉じ込められ、外出もインターネットも禁止され、毎日20ページずつだけ渡される原稿を翻訳していくよう命じられる。
初日の夜、アングストローム宛てにメールが届き、「冒頭の10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページをネット流出させる。」と脅迫される。

以下ネタバレあり

 

インフェルノ(上) (角川文庫)

トム・ハンクス主演で映画化された(「ダヴィンチ・コード」等)ダン・ブラウンの人気小説”ロバート・ラングドン”シリーズの4作目である「インフェルノ」の出版時に、海賊版ハッカー対策として行われた逸話を基に作られた作品。
ダン・ブラウンの同意のもと、翻訳家らを地下室に隔離して、翻訳させたという。

 

プリテンダー~仮面の逃亡者~(1)【日本語吹替版】 [VHS]

ドはまりしたドラマ「ザ・プリテンダー 仮面の逃亡者」のシドニー役のPatrick Bauchauが「デダリュス」の著者という設定のため、何かひとひねりあるのだろうと、怪しみながら観始めた。
彼が指導する“プリテンダー”が9人の中にいるのでは?などと、想像してみたり。
ところが、ひとひねりどころか、まんまと騙されて驚かされてしまった。

 

【映画ロケーション】

 

フォンテーヌ書店の内部の撮影:書店Liragif(フランス)

  

フランクフルト ブックフェア外観 Messe Frankfurt

 

ロンドン警察外観 (アレックスとアングストロームが会った場所)

 

アレックス・グッドマンのロンドンの家の外観(住んでいる形跡がない)

 

フランスのメトロのビラケム駅で、アレックスが乗り込み、ねずみを放して大騒ぎの中、スーツケースをすり替え、アングストロームが次の駅のパッシー駅で降りる、というシーン。その間にメトロはセーヌ川を渡っている。

 

※以下ネタバレ

(実際の流れ)

(ベストセラーの誕生)

アレックス・グッドマンは、少年時代からフォンティーヌ書店に通い、店主であるジョルジュ・フォンテーヌを師と仰いでいた。
成長したアレックスが書いた「デダリュス」を読んだジョルジュは、世に出すべきだと出版を勧めるが、アレックスはジョルジュが書いた事にして欲しいと頼み、ジョルジュは懇意にしていたエリック・アングストロームに連絡し、オスカル・ブラックというペンネームで出版、大ベストセラーとなる。

(ジョルジュ殺害) 
出版社のオーナーであるアングストロームは、「デタリュス」三部作の完結編の世界同時出版を大々的に発表。
新作の内容が流出しないよう、地下室で翻訳家らに翻訳させると、ジョルジュに説明に行く。
ジョルジュは、アングストロームに、”金儲けに走る君とは、独占契約はしない。
翻訳家を地下に押し込めるなど人権侵害だ!”と怒りだす。
アングストロームは、階段を降りようとするジョルジュを突き飛ばし殺害、フォンテーヌ書店に火をつけ、新作の原稿を奪い、逃走。

(映画には無いシーン)
アレックスは、ジョルジュが亡くなったことを知り、アングストロームが彼を殺したと確信し、復讐のために計画を立てる。

(英語版翻訳に抜擢)
アレックスは、「デタリュス」の海賊版の人気翻訳家となり、アングストロームと会うことに成功。
警察署で、アングストロームに会った際、発売前の完結編の出だしがわかると言い、(当然作者本人なので)冒頭の内容を当て、アングストロームを驚かせ、公式の英語担当の翻訳者に選ばれることになる。

(原稿のコピー)
アレックスは、事前にチェン、ハビエル、イングリット、テルマの翻訳家4人に声をかけ、アングストロームが肌身離さず持っている「デタリュス」完結編の原稿をコピペするという計画に、協力してほしいと説得する。
(札束が映るシーンあり。=高額報酬?)
※実は、彼らには伝えていないが、アレックスはそもそもアングストロームのスーツケースを取り換えたフリをしただけで、自分が用意した、自分の原稿をコピペしただけ。

 (メール自動配信準備)
翻訳作業でネット接続が出来ない地下へ行くため、アングストローム宛てのメールの自動配信、新作のネット流出の準備をする。

(翻訳スタート) 
初日、9か国の翻訳家を要塞のような地下室に集め、翻訳がスタートする。
チェン、ハビエル、イングリット、テルマは、事前の打ち合わせ通りのセリフを語っていく。
時間になり、アングストローム宛ての脅迫メールが届き、翻訳家らが話した内容(セリフ)も書かれていたことから、
翻訳家9人のうちの誰かが、犯人では?とアングストロームが疑い出す。

(エレーヌ)
家族との関係、翻訳家同士で語る中での自分の想像力の無さ、アングストロームからの指示に背き小説を書いていたことがばれ、作品を酷評され、原稿を燃やされたこと等から追い詰められ、首つり自殺する。
(緊迫感が増し、アングストロームの冷酷さが際立つ。)

(反逆)
エレーヌの自殺を警察に知らせないアングストローム
脅迫は続き、ついに翻訳家らに銃を向けてくる。
アレックスが、遠隔操作でメールを送っていると白状し、翻訳者8人は、アングストロームを取り押さえようとするが、アングストロームは、ロシア語担当のカテリーナ・アニシノバを撃ってしまう。

(アングストローム逮捕)
カテリーナは、腹部を撃たれ倒れるが、それでも救急車を呼ばないアングストローム
エリックは、遠隔操作のPCがある隠れ家へ行くよう伝え、入口の暗証番号も伝える。
アングストロームの部下のローズマリーが、エリックの隠れ家に到着するが、アングストロームからなじられている自分の姿が映った写真を見つけ反旗を翻し、パソコンを止めずに、その場を立ち去る。
アングストロームは、指示された口座(実は自分の口座)に8000ユーロを入金。
その後、アングストロームはアレックスも撃ち、警備員たちに銃を向けられ殺人未遂の罪で逮捕される。(逮捕シーンは無し)
アレックスは、服の下に隠していた本で弾が止まり無事だったが、カテリーナは意識不明で入院。

(刑務所)
アングストロームに面会するアレックス。
「完結編の冒頭をどうやって知った」と聞かれ、アレックスは彼の胸元にある盗聴器を手で押さえ、自分が「デタリュス」の作者であると伝える。
アングストロームは「オスカル・ブラックは殺した!」と思わず叫び、ジョルジュ殺害を自白してしまう。
カッとなったアングストロームが、アレックスの首を絞めるが、すぐに取り押さえられアレックスは、ジョルジュの仇を討つ。
~おわり~

 

 閉じ込められた要塞のような地下室、後半の緊迫した状況、ラストの刑務所での対決等、観ている側もぐっと体に力が入っていく展開。
冒頭の炎が何を意味していたのかがわかった瞬間と、頭の中でぐるぐると時系列順にストーリーを思い返していた。
10点満点中、9.5点。