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PASSING 白い黒人 (2021)

Netflixより
1920年代のニューヨーク。
白人のふりをして生きるかつての友人と再会した黒人女性。
2人の生き方が交差するなか、友人の存在は彼女の日常を揺るがし始めていく。

以下ネタバレあり

 

Passing & Quicksand: With linked Table of Contents (English Edition)

原作は、Nella Larsenの1929年の小説、“Passing”。
作者は、ハーレムルネッサンス最高の小説家として賞賛されているそうです。
書かれたのは1929年、まさかの昭和4年!衝撃でした。
作者のネラ・ラーセンさんについて簡単にググったが、彼女のファミリーヒストリーはかなり波乱万丈のよう。
本人の人生についてもいつか映画化されるのだろうと感じた。

 

【映画ロケーション】

ドレイトン・ホテル:アイリーンがクレアと再会したホテル
ブルックリン歴史協会 Center for Brooklyn History

 

ドレイトン・ホテルのカフェのシーン:プロスペクト公園のボートハウス内
結婚式会場等として利用されるかたも多いようです。

 

ラストのアパートメントのシーン:グラハム・コート(NY)

 

上記アパートメントの階段を上るシーン:the Center for Brooklyn History
動画の1:24や3:10あたりで階段が映ります。ジョージ・ポスト設計

 

映画を観ながら、タイトルのパッシングの意味は何だろう?と考えていた。
鑑賞後、ネットで調べると、
ある人種の人々が、別の人種のメンバー・グループに受け入れられたり、認識(パス)されることを意味している言葉のようだ。
主には、黒人と白人のミックス(混血)で、外見が白人に近い人々が、より良い生活を求め、黒人コミュニティを離れ、白人として生きていくことを意味しているという。
あれだけ人種差別があった時代に、何故ミックスが生まれたのだろうか?と思ったが、Wikipedia(英語)に、奴隷女性をレイプすることは合法だったため…という一文があり、衝撃を受けた。

 

(あらすじ)
ニューヨークで夫と子供たちと裕福な生活を送っている黒人女性アイリーン。
暑い夏の日、タクシーに案内されたホテルにひそかに白人のフリをして立ち寄り、のどを潤そうとカフェに入る。
店内で、幼馴染のクレアと再会し、ミックス(混血)である彼女が“パッシング”(白人のフリ)をして白人男性と結婚したことを知る。
彼女に誘われるままクレアの家に立ち寄ったアイリーンは、夫を紹介されるが、黒人差別をする夫にショックを受ける。
クレアからの連絡を無視するアイリーンのもとに、クレアが直接会いに来きてしまう。
クレアは、あっという間にアイリーンの周囲の人々にも受け入れられ、皆、クレアの魅力に惹かれていく。
アイリーンは、夫もクレアに夢中ではないかと疑いだす。
ある日、黒人の友人と腕を組み仲良く歩いている時に、クレアの夫と再会する。
動揺したアイリーンは、彼を無視して立ち去ってしまうが、そのことでクレアが黒人ではと夫から疑われることにならないかと心配しはじめる。
ある夜、アイリーンらとパーティーに出席したクレアのもとに、夫が怒鳴り込んでくる…。
(エンディングへ…)

 

人種差別がテーマだと思っていたが、実は同性愛も隠れたテーマだったことに気付いていく。
原作の小説では、より官能的に表現されているようだ。
アイリーンが、ホテルで再会し、その後決別しようとしても、いざクレアに会うと彼女の言いなりになってしまったのは、アイリーンもクレアの魅力に逆らえなかったということなのだろう。
その上、夫までクレアの魅力に取りつかれているかも…と嫉妬の感情も加わり衝撃のラストへ向かっていく。

肌の色が薄い黒人として生まれた、アイリーンとクレア。
アイリーンは、たまに白人のフリをして特権を利用することはあるが、黒人男性と結婚し、黒人コミュニティーに属している。
一方、クレアは白人の親戚に育てられたのち、ヨーロッパに渡り、白人として受け入れられたことで、ルーツを隠し、白人男性と結婚する。
たとえ、夫が人種差別者だとしても、笑顔で流すクレア。
だが、クレアもアイリーンと出会ったことで、黒人コミュニティにいることの居心地の良さから抜け出すことは出来なかったのだろう。

年代から、やはりラストは悲劇しかないのだろう…とは予想していたが、「風と共に去りぬ」のスカーレットのようなラストになってほしかった。