映画とドラマとロケ地

映画や海外ドラマの撮影地の紹介+レビュー

ラストナイト・イン・ソーホー Last Night in Soho (2021)

ラストナイト・イン・ソーホー (字幕版)

ファッション・デザイナーだった母が幼少期に自殺し、お針子をしていた母方の祖母に育てられたエロイーズ・ターナー(通称エリー)。エリーには霊感があり、鏡の中に亡くなった母の姿をたびたび見かけていた。
憧れのロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに入学したエリーは、学生寮に馴染めず、年配のコリンズさんの家の屋根裏に下宿することになる。
引っ越ししたその夜、エリーは夢の中で、歌手を夢見るサンディという女性になり、60年代のロンドンを体験することになる。

以下ネタバレ注意

 

ロケ地 祖母の家

Colstrope Farm
祖父母と暮らしていた家は、コーンウォール州レッドラス近くと説明されていたが、実際は、バッキンガムシャー南西部にある小さな村にあり、英国ドラマのロケ地としてお馴染みの家。(名探偵ポアロダウントン・アビー等)

 

ロケ地 学生寮

Ramsay Hall

学生寮の玄関のシーンは、メイプル・ストリートにあるラムジー・ホール入り口で撮影されています。

 

ロケ地 The Toucan

学生たちが集まるパブのシーンで登場し、その後、エリーのバイト先になる店。
エリーの働く地下のフロアは、セット。

 

ロケ地 下宿先外観

エリーが下宿をした、コリンズ女子の家。青い扉の建物です。
この家に住むようになってから、エリーはサンディの夢を見始めます。
映画の中で、住所を言うシーンが何度かありますが、実際の住所は、8 Goodge Place, Soho, London です。

 

ロケ地 カフェ・ド・パリ

エンパイア・ヘイマーケット・シネマ(映画館)

エリーが夢の中で60年代にタイムスリップしたシーンで登場したカフェ・ド・パリの外観。店内のシーンは、セットでの撮影。

 

ロケ地 リアルト劇場入り口

サンディが、ジャックに連れられオーディションを受けた劇場の入り口。
店内に入ってからは、セットでの撮影。
サンディが、Petula Clarkの「ダウンタウン」を歌うまでは、まさに夢心地なシーンでうっとりしながら観ていた。
グーグル・マップのストリート・ビュー(2019年8月)に、なんと映画のセットがそのまま映っていた。上記動画の1:33~、興味がある方はご確認を!

 

ロケ地紹介動画

こちらの動画では、エドガー・ライト監督と共同脚本家クリスティ・ウィルソン=ケアンズが、撮影で使われた場所を紹介しています。脚本家のウィルソン=ケアンズは、ロケ地となったThe Toucanで、5年間バーテンダーとして実際に働いていたという。
映画のシーンと重ねて、ぜひ楽しんでください。

時代考証

Lucy Pardee(時代考証担当プロデューサー)

監督は、60年代のロンドンを描くため、きちんとした時代考証をした上で製作をしていきたいと考え、「ROCKS」でBAFTA賞を受賞したキャスティングディレクター兼研究者でもあるルーシー・パラディーと契約する。
パラディーさんは、60 年代にソーホーに住み、働いていたあらゆる階層の人々にインタビューをし、膨大な情報を集めたという。
監督へのインタビューでは、彼女は60年代のロンドン(ソーホー)のパトロール警官や、ファッション系の学生、性産業に関わった人々に関しても調査し、それ以外にも悪夢や睡眠障害、超常現象や幽霊等までも調べ上げたと語っている。

 

Sandie Shaw

アニャ・テイラー=ジョイが演じたサンディ(本名:アレクサンドラ)は、実在の女性歌手、サンディー・ショーから名づけられたと言われている。
サンディが来ていたピンクのスウィング・ドレスは、サンディ・ショーが「Puppet On A String/パリのあやつり人形」を歌い、ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(1967)で優勝した時に着ていたドレスを参考にしていると思われる。
他にも、サンディ・ショーのヒット曲「(There's) Always Something There To Remind Me/恋のウェイト・リフティング」が、映画の中で使用されている。

感想(ネタバレ注意)

上記に書いたように、綿密な時代考証等のもと作られた素晴らしい作品だった。
細かいシーンにも、様々なメッセージが仕込まれており、それが映画の謎解きに関わっていたり、俳優らの過去の出演作にかけてあるものだったりと、1度観ただけでは気づかないぐらい細かく練りこまれていた。

個人的に後で気付いてゾクっとしたのが、夢の中でサンディが殺害される様子を目撃したエリーが、その後、当時の新聞にサンディ殺害に関する記事が無いかと調べているシーン。このシーンで、ある男性(工場主)の行方不明事件の記事が映り、そのシーンからエリーは男達の亡霊に追いかけられるようになる。
そのシーンを観た時は、単にサンディを買っていた男達の亡霊が、彼女に似たエリーを追っていたのかと思っていたが、実は、サンディに殺害され行方不明になっていた男たちが、エリーに訴えていたのだった。

また、男達の最期を知った瞬間、ミス・コリンズの色々な言葉に、裏の意味があったと気づき、ぞっとさせられた。
・(8時以降)男性を部屋に入れてはいけない。
・改装はしたくない。
・夏は臭うため、排水溝に蓋をすること。
エリーが借りた屋根裏部屋の部屋に、殺害された男達が隠されている(埋められている)という意味だったのだろう。

エリーは、サンディに殺されそうになっても、歌手を目標にロンドンに来たサンディが転落していく姿を見てきたため、サンディであるミス・コリンズに生きてほしいと願う。
そのエリーの言葉に、過去の自分を殺しひっそりと生きてきたミス・コリンズが、ようやく元の自分を取り戻し、殺害した男達の亡骸と共に炎に包まれていく。
恐ろしいけれども、彼女の魂が浄化されていくようにも思える素晴らしいシーンだった。

ロンドン目当てで観たけれど、素晴らしい作品に出合えて感動です。