フランスの香水業界で天才調香師として活躍していたアンヌ・ヴァルベルグ。ある時、仕事への重圧から突然嗅覚障害になり、現在は細々と仕事を続けていた。
彼女の新たな雇われ運転手になったのは、ギヨームという男性。離婚し、娘の親権の共同親権を勝ち取るため、必死で働いていた。
心を閉ざし、人との関わりを避けてきたアンナは、ギヨームと関わるうちに、頑なな心が解きほぐされていく。
以下ネタバレ注意
雇用主と運転手の組合せ
雇用主と運転手が絆を結んでいくという展開は、昔からよくある設定だが、名作が多いのは何故なのだろう。
①タンデム(1987)
フランス映画であれば、この作品を思い出す人が多いだろう。
セザール賞(フランスの映画賞)では、4部門5ノミネートされたヒット作品。
②ドライビング Miss デイジー(1989)
1970年代のアメリカ南部を舞台に、ユダヤ系未亡人とアフリカ系運転手の交流を描いた作品。アカデミー賞では、9部門ノミネート、4部門で受賞した有名作品。
③グリーンブック(2018)
最近の作品では、やはりこの映画が真っ先に思い出される。
1960年代の人種差別が色濃く残るアメリカ南部へのツアーのため、黒人ジャズピアニストが、イタリア系白人運転手を雇い、旅をしていく物語。
アカデミー賞では、5部門ノミネート、3部門が受賞する。
上記のような名作を観ているため、多少既視感はあるが、それでも心に静かに響いてくる名作だと思う。
ロケ地 洞窟
Grotte du Wolfloch
洞窟のシーンは、ウルフロック洞窟での撮影。
ロケ地 ガソリンスタンド
立ち寄ったガソリンスタンドにあったレモン色の石鹸の匂いをかいだアンヌが、昔の出来事を思い出し、同じ石鹸を買って帰るシーン。
映画に映った看板や電話番号等は、そのまま映されていた。
ロケ地 海辺のレストラン
Le Galatée
ギヨームが、娘と行った海辺のレストラン。実際の店舗名が映っています。
観光名所トゥルヴィル・シュル・メール。
何故、フランス映画の海辺は、あんなに美しく見えるのだろう。
ロケ地 Dior
パリ エネ通り沿い
ラストで、Diorにアンヌとギヨームで売り込みに行くシーン。
感想
※ネタバレ注意
派手でショッキングなシーンも、ラブシーンも無く、人生の再起をテーマにした大人なフランス映画。
嗅覚障害になり仕事も名誉も全て失った調香師のアンヌ。
以前のアンヌは違ったのかもしれないが、現在は、対人関係が苦手な堅物といった印象。
そんなアンヌのお抱え運転手になったギヨーム。
こちらは、不器用でさえない中年男性なのだが、善の人。ギヨームは、当初理不尽なアンヌの態度に激怒していたが、少しずつアンヌという人を知ることで、思いやる気持ちが深まっていく。
アンヌもギヨームの優しさや思いやりを知り、さらに彼の調香師としての才能を見出し、お互い無くてはならない存在になっていく。
ラストでDiorへの香水の売り込みにも成功し、ギヨームは娘の学校で調香師に関する授業を行っていた。娘が誇らしげに父親を見つめる様子から、親子関係も順調な様子がうかがえる。
多くを語らずとも観る側が、すっと共感していけるようなシーンが続く。
静かで癒される作品だった。