軍事政権が支配する近未来の北米。人々は人権を失い、子どもは5歳になると国家の所有物として教育・洗脳されることになっていた。そんな中、先住民クリー族の女性ニスカは娘ワシースを隠して育てていたが、あるときついに発見され、追われる身になってしまう。だが、逃亡中けがを負ったワシースの容体が悪化、ニスカは断腸の思いで娘を当局に引き渡すことに。やがてニスカは、娘を奪還するため地下組織に参加するのだが……。
以下ネタバレ注意
カナダ先住民寄宿学校
映画は、2043年の世界を描いているが、1876年以降の先住民に対する同化政策としてカナダ政府が設置した寄宿学校制度の闇が描かれている。先住民の子どもたちを固有の文化や宗教の影響から隔離し、カナダの文化に同化させることを目的とした学校だという。家族と離れ、寄宿学校で教育を受けた子どもたちは”同化した市民”として強制的に市民権を与えられ、先住民としての法的なアイデンティティーを失うことになったという。
トゥモロー・ワールド
2006年の映画「トゥモロー・ワールド」(Children of Men)から影響を受け作られた作品。人類が繁殖能力を失った近未来を舞台に、奇跡的に妊娠を果たした若い女性を守ることになった男(クライヴ・オーウェン)を描いた作品。
スタンディングロック居住地の抗議活動
ダコタ・アクセス・パイプライン(石油パイプライン)の計画に、スタンディングロック居住地のスー族が、長年反対してきた問題。
スー族や協力者らは、4年間抗議活動を続け、2020年に勝訴している。
2016 年に監督は、反パイプラインの抗議活動が行われた場所であるスタンディング ロック保護区への調査旅行に行き、影響を受けたとインタビューで語っている。
ロケ地 ハミルトン
主な撮影は、カナダのハミルトンで。
ジャクソン・スクエア、高層ビル等が映っている。
感想
映画の邦題がB級っぽかったため、気軽に観始めたのだが、意外にも歴史的なことをベースにした深い作品だったので、驚かされた。
雑な点も多いが、ベースがしっかりしているので、見ごたえはあった。
ありがちな派手なアクションも無く、邦題にある未知なる能力も意外としょぼかったりもするが、逆に説得力があるようにも感じられた。
当初、母ニスカが、先住民で言い伝えられてきた“救世主”だと思われたが、ラストで娘ワシースが“救世主”だったことが判明する。
言い伝え+救世主、とくれば、頭の中はあの歌が流れてきて…。
「その者、青き衣を纏いて…」とつぶやきはじめてしまう。
この映画は、残念ながらナウシカほどの壮大さはなく、今のところドローンを操れる能力のみ。残念だが、それで良かったのかも。
ネット上での評価は低そうだが、個人的には満足。
観る前に、カナダ先住民寄宿学校の歴史を予習しておくと、見ごたえあると思います。