46年前に隣国のウルグアイから移り住んで以来、ブラジル南部の地方都市ポルトアレグレで暮らす78歳の老人エルネスト。最近は視力がすっかり衰え、日常生活に支障を来すようになりながらも、なお頑固に独り暮らしを続ける彼のもとに、ある日一通の手紙が届く。差出人は、ウルグアイ時代の旧友の妻ルシア。中身が気になりながらも、自分では手紙が読めないエルネストは、ふとした縁で知り合った若い娘ビアに代読を頼むことに。
以下ネタバレあり
Luigi De Re
この映画のモデルになった人物。
アナ・ルイーザ・アゼヴェード監督が、映画「Antes Que o Mundo Acabe」を製作中に、写真家のFabio Del Re氏から、同じく写真家の父Luigi De Re氏の話を聞き、この映画を思いついたいう。
ポルトアレグレに住んでいたイタリア人写真家のLuigi De Re氏が、目が見えなくなったことで、息子のFabio Del Re氏や、フランスに住んでいる姉等、離れて住む家族とメール等で簡単に連絡が取れなくなったことがあったという。
Fabio Del Re
ポルトアレグレ出身の写真家
New England School of Photography(ボストン)で、写真を学ぶ。
ウルグアイ出身
主人公のエルネストは、ウルグアイ人。
ウルグアイは、1973年にクーデターが起こり、市民が厳しく弾圧された軍事政権時代があった。
エルネストは、その時代にウルグアイからブラジルに亡命したという設定。
⇒同じく軍事独裁政権下に亡命していた詩人マリオ・ベネデッティと繋がっていく。
「なぜ私たちは歌うのか」
「Por qué cantamos」Mario Benedetti
エルネストが、「生ける詩人たち」の集会で披露した詩。
マリオ・ベネデッティ:ウルグアイ出身のジャーナリスト、小説家、詩人
軍事独裁政権下にあった1973年から1985年まで、数か国に亡命。
2022年4月
映画でこの詩を知り、改めて詩を読みなおし、ウクライナのニュースを思い出していた。
プンタデルエステ国際映画祭
WOWOWによると、2019年プンタデルエステ国際映画祭で男優賞と観客賞に輝いたと説明されている。
プンタデルエステ国際映画祭での監督・脚本のアナ・ルイーザ・アゼヴェードのスピーチの様子。
サンパウロ国際映画祭で批評家賞を受賞している。
監督とビア役のガブリエラ・ポエステルへのインタビュー動画。
映画「自転車泥棒」
亡くなった旧友オラシオと彼の妻ルシアと一緒に観たという映画。
借金返済のため、ビアが当初、盗みの目的でエルネストの家の合い鍵を作り、金目のもの盗んでいたということにもかけているのだろう。
映画「自転車泥棒」(原題: Ladri di Biciclette)
2年間失業後、ようやく職を得たアントニオ・リッチが、仕事に必要な自転車を盗まれ、息子とローマの街を歩き自転車を探す物語。
最終的に、追い詰められたアントニオは、自転車を盗むが、すぐに捕まり、息子に全てを見られていた…という、悲しいラストを迎える。
個人的に「ソフィーの選択」と共に、名作だが精神的ダメージが大きく、二度と見たくない作品。
ネタバレあらすじ
主人公:エルネスト(78歳)
ウルグアイ出身 46年前にブラジルに亡命。
視力が低下するが、妻亡きあともアパートで一人暮らしを続ける。
息子:ラミロ
サンパウロ在住 妻子あり
父のアパートを売り、サンパウロで一緒に暮らしたいと考えている。
ルシア
ウルグアイ時代の旧友オラシオの死を知らせる妻ルシアから手紙が届く。
実はルシアは、エルネストの元恋人。
視力が低下したエルネストは、偶然知り合ったビアに代読を頼み、返事を送るために、口述筆記もビアに頼む。
ビア
ビアは、同じアパートの住人の犬の散歩のアルバイトをしている若い女性。
荒んだ生活を送っており、エルネストが目が見えないことを知り、合い鍵を作り、お金を盗んでいた。
ただ、好奇心は旺盛なビアは、エルネストとルシアとの手紙のやり取りに興味を持ち、エルネストに正直に話し、手紙の代読・口述筆記を続けていき、エルネストもビアに親身に接していく。
隣人ハビエル
喧嘩しながらも、唯一心を許せる隣人だったハビエルの妻が急死する。
落ち込んだハビエルは「老いては、子に従え、さ。」と言って、妻の埋葬後、ブエノスアイレスに住む娘と暮らすと、エルネストに別れを告げる。
エルネストは、ビアにアパートを預け、ウルグアイに住むルシアの元へ向かう。
ルシアは驚きながらも、再会を喜び、家に招く。
~おわり~
WOWOWはいつも自分では見つけられない素敵な作品を紹介してくれる。
今回のブラジル発の作品も素晴らしいものだった。
個人的には、エルネストのアパートが気になり、インテリアなどを改めて観なおしている。