フィンランドの画家シャルフベック(1862-1946)。1917年、首都ヘルシンキで大規模な個展が開かれたのをきっかけに彼女を再評価する機運が高まり、ついには同国の国民的画家と目されるように。そんな彼女の生涯の一大転機となった1915年から1923年に焦点を当て、当時50代の彼女が、彼女の絵を崇拝する19歳年下の青年との恋に苦悩するさまを痛切なタッチで描く。
以下、個人的情報まとめ
原作
原作は、フィンランドの作家Rakel Liehuの「Helene」(2003)。
フィンランドの文学賞であるルーネベリ賞(2004)を受賞している。
ヘレン・シャルフベック
北欧フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベック。
映画では、ほぼ史実通りに描かれているようだ。
自身の病気と母親の看病のため静養していた不遇の時代から始まり、ジャーナリストで美術評論家でもある画商ヨースタ・ステンマンが個展を開いたことがきっかけで人気を博すようになる。そして、この映画で主に描かれているのは、作家・画家・美術評論家のエイナル・ロイターとの淡い恋から友情へと続いていく関係が描かれている。
日本でも、2015年~2016年に「ヘレン・シャルフベック-魂のまなざし」という美術展が開催されていた。
エイナル・ロイター
主人公のヘレンもだが、エイナル・ロイターもかなり似せているのがわかる。
上記のWikipediaの実際の写真と映画を比べてみてください。
淡い恋の相手というより、ヘレン支持者・ヘレン推しといった印象。
出会ったのは、ヘレンが50歳、エイナルが30歳ぐらいのようだ。
映画では「婚約(1919年)は、間違いだったかも…。」と意味深に語っていたが、1922年に結婚し、翌年お子さんが生まれている。
でこっぱちめ。(あくまで個人的感想です。)
ヨースタ・ステンマン
ヘレンの家にある絵を全て購入し、個展を開いた画商ヨースタ・ステンマン。
フィンランド系スウェーデン人の美術商で、ヘレン以外にもティコ・サリネンのパトロンとしても有名。
こちらの記事には、画商及び美術界のパトロンとして、20世紀前半のスウェーデンとフィンランドの芸術界に偉大な足跡を残したと書かれている。
ロケ地 Art Museum Ateneum
The film HELENE by director Antti J. Jokinen will premiere in Finland on Friday 17 January. We had the honour to be one of the filming locations in May 2019. 🎬 ✨ 📽️ Helene Schjerfbeck is portrayed by @laura_birn and Einar Reuter by@jowppe. #heleneschjerfbeck @NordiskFilmFI pic.twitter.com/riF50MIx1M
— Ateneum Art Museum (@AteneumMuseum) January 16, 2020
美術館の公式Xで、撮影のことが紹介されている。
ひとこと
3歳のときに階段から落ちて腰を痛め足が不自由になり、小学校には通えなかったというヘレン。11歳の時に美術学校へ入学するが、実社会もフィンランドの芸術界も男中心の世界で非常に苦労したと思われる。
映画の中で建築家である兄マグヌスが登場するが、家庭内での男尊女卑もあり「女のものは男のもの」と言い妹の絵の収益を奪おうとする。母親は世間体が悪いと兄の味方をするが、ヘレンは断固拒否。「今に世間が追いつく」と話す。
マグヌス許すまじ!と激怒していたが、後で調べたら、意外と偉い人だった。
兄マグヌス
フィンランド国内には、マグヌス(呼び捨て)の設計した建築物があるそうだ。
フィンランド建築博物館も、マグヌスの設計。
20世紀初頭のフィンランドの公共建築物の設計と建設に貢献した人物と書かれている。