時は2000年。イギリスで、半世紀前に旧・ソ連の国家保安委員会(KGB)に核開発の機密を流していたスパイがMI5に逮捕された。だがその人物は、ジョーン・スタンリーという、どこにでもいるような80代の老女だった…。
以下ネタバレあり
原作「Red Joan」
原作は、ジェニー・ルーニーによる2014年の同名小説。
ソ連に英国の原子力プログラムに関する機密情報を流したメリタ・ノーウッドの実話から着想を得て書かれた作品。
主人公のモデル
映画のモデルになった、メリタ・ノーウッドさんに関する動画。
British Non-Ferrous Metals Research Association(英国非鉄金属研究協会)で秘書として40年間働く。
関連書籍「THE MITROKHIN ARCHIVE Ⅱ」
元KGBのВаси́лий Ники́тич Митро́хинと歴史家のChristopher Andrewの共著である「ミトロヒン・アーカイブ」(1999年)で、初めてメリタ・ノーウッドさんの活動が公になる。
Васи́лий Ники́тич Митро́хин氏は、英国に亡命し、MI6にKGBの情報を与え、メリタ・ノーウッド以外の未知のエージェントらに関する情報を暴露したという。
【ロケ地】5か所紹介
ケンブリッジ大学(セント・ジョンズ・カレッジ)の公式HPでも映画撮影に関し紹介されています。
冒頭のKNIT for SPAIN(内線に苦しむスペインに編み物を)という女性たちの活動を映すシーン。
ケンブリッジ Senate House前
川沿いでレオが寝転び、二都物語の本を持っているシーン。
大学のLower River Courtから、有名なBridge of Sighs(ため息の橋)が見える。
レオが「見せたいものがある」と言って、ジョーンを連れて行くシーン。
St John's College Chapel
モントリオール大学到着シーン。(降車シーン)
ロンドン大学 Senate House Library
主人公のジョーンを演じた名優ジュディ・デンチのインタビュー映像。
イギリス史上、最も意外なスパイと呼ばれた女性を演じるのが、007の上司“M”(部長)を演じたジュディ・デンチというところも面白い。
※ネタバレ注意
ネタバレあらすじ
ケンブリッジ大で、物理学を学んでいたジョーン。
友人のソニアに誘われ、彼女のいとこのレオが率いる共産主義の活動に参加をはじめると、すぐにジョーンとレオは恋に落ちる。
ジョーンは、英国の原子爆弾プロジェクトに関わるマックス・デイヴィス教授の秘書として採用されるが、レオからソ連のために情報漏洩してほしいと頼まれ、彼と決別する。
その後、ジョーンは教授とともに船でカナダの研究所へ向かうことになり、船上で恋に落ちる(不倫)が、教授と妻との離婚が進展せず、別れることに。
第二次世界大戦で、日本の広島や長崎に原爆が落とされることにショックを受けたジョーンは、イギリスがソ連向けに原子爆弾を開発しようとしていることを知り、ソ連にイギリスの核開発情報を提供しようと考え、動きだす。
久々に会ったソニアは、英国人と結婚したと話す。
彼女を経由し、情報を提供しはじめたジョーン。
ソニアは妊娠・出産した後も、子連れでジョーンと会い、スパイ活動を続けていく。
冷戦に突入し、スパイ活動が困難になる中、レオが再びジョーンの前に現れ、ジョーンは彼の愛を受け入れるが、彼は改めてジョーンにスパイ活動をしてほしいと頼んできたため、愛ではなく目的のためだけに自分に近づくだけのレオを拒絶。
「最初から愛は無かった」と立ち去る。
その後、レオと連絡が取れなくなったジョーンは、心配になり彼の家に尋ねると、彼は、首をつって自殺をしていた。
その後、ソニアとも連絡が途切れ、ソニアの家を訪ねると、彼女はおらず、私物を置き、消えていた。
タンスには、無くなったジョーンのファーコートがあり、タンスの奥から写真や書類が発見される。
帰りの電車で、彼女の持ち物を確認していき、彼女が出産した男の子は、レオとの子供だったと知ってしまう。また、外交官のウィリアムがゲイである証拠の写真も発見する。
イギリスの公安部は、ソ連への核爆弾の情報漏洩の犯人が、デイヴィス教授だと疑い、教授が誤認逮捕されてしまう。
面会にいったジョーンは、そこで、全てを告白する。
教授の妻は、彼が逮捕されてすぐに離婚に同意したと知る。
ジョーンは、外交官のウィリアムに彼がカラクとキスする写真を見せ、教授の釈放と、教授と自分のオーストラリアへ向かうためのパスポートを用意するよう脅し、写真と引き換えに、教授と2人でオーストラリアへ逃げる。
2000年、ウィリアム・ミッチェル卿の死に関する調査から、ジョーンの名前が浮上し、逮捕される。
タブロイド紙は、80代と高齢女性のスパイ容疑を取り上げ、彼女を“レッド・ジョーン”(共産主義者のジョーン)と呼び名をつけ、裏切り者として叩きだす。
ジョーンは、弁護士とともに自宅前で会見をし、祖国を裏切るつもりはなく、(核開発の)知識を共有することで、新たな世界大戦を引き起こさせないために動いたと説明する。
息子は、母親が平和を実現させたと弁護する。
エンドロール
実在の人物、メリタ・ノーウッドさんは、高齢のため不起訴となり、93歳で亡くなったと説明書きが入る。~おわり~
ケンブリッジ・ファイブ
映画の登場人物は、全員架空の人物ではあるが、ジョーン以外も各自モデルになった人物がいたようだ。
:英国で暗躍したケンブリッジ大学出身のソ連の大物スパイ5人。
ウィリアム・ミッチェル卿は、エリザベス皇太后のいとこであるサー・アンソニー・ブラントが思い浮かぶ。(同性愛者を公表も)
となると、映画でウィリアムの恋人として登場したカラクが、ガイ・バージェスということになるだろう。
ガイ・バージェスとえいば、映画「アナザー・カントリー」。
主人公ガイ・ベネットは、ガイ・バージェスがモデルになっている。
映画のガイも、 本人(Wikipedia英語)もどちらもイケメン。
この時のルパート・エヴェレットは、とにかく美しかった!
(この映画に影響されて、クリケットにも興味を持ち、最近でもNetflixのCricket Fever: Mumbai Indiansを視聴していたところ。)
ソニアは、名前からやはりウルスラ・クチンスキーがモデルということになるのだろう。
別名(暗号名):ソーニャ
核物理学者クラウス・フックスをスパイとして引き入れ、プルトニウム爆弾の設計図入手に成功。
その功績から、ソ連から英雄勲章を2回受章している。
他にもモデルになった人物はそれぞれいるのですが、長くなるのでこの辺で。
ジョーンの若い頃を演じたソフィー・クックソンがとにかく美しかった。
キングスマンのロキシーに次いで、はまり役だった。
歴史メロドラマ、といった内容。
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