ソヨンは高齢の売春婦だが、性病を診てもらおうと行った病院でフィリピン人女性が医師に暴力を振るう事態に遭遇し、そのままフィリピン人女性の幼い息子ミノを引き取ることに。ソヨンは売春婦を続けながら同じアパートの住人たちの力を借りてミノの面倒をみるが、そんなソヨンはかつてのなじみの客で、余命が短く絶望した男性と再会し、その安楽死を手伝ってしまう。さらにソヨンは別の男性客とも再会するが、予期せぬ事態が……。
以下ネタバレあり
登場人物紹介
ソヨン:主人公の高齢の売春婦(=バッカス・レディ) (左から2番目)
ドフン:同じアパートに暮らす青年 フィギュア製作者 片足が義足 (右端)
ティナ:トランスジェンダー アパートの大家さん (右端)
ミノ :フィリピン人女性の幼い息子 (右から2番目)
同じアパートに住む3人は、皆社会的弱者という設定。
【ロケ地】タプコル公園
ソヨンが客待ちする公園:タプコル公園(別名:パゴダ公園)
1919年 三・一独立運動の発祥地
義菴孫像が映る。(三・一独立運動を主導した人物。1901年~1906年日本に亡命)
【ロケ地】NATIONAL FOODS MART
ソヨンがミノ少年を連れ、食器洗い用のポンポンを買いに来る店。
【ロケ地】曹渓寺 조계사
ソヨンがホテルでの自殺介助後、もらった大金のほとんどを納めたお寺。:조계사
【ロケ地】臨津閣
ソヨンが皆を連れ、最後に旅した場所。:臨津閣
一般市民が北朝鮮に最も近付ける場所。映画に映った橋は、自由の橋。
(あらすじ)ネタバレあり
主人公のソヨンは、高齢の売春婦。
かつて、黒人の米兵との間に子供を設けるが、1歳の時に里子に出す。
そのため、ハーフの米兵を見かけると、声をかけずにはいられない。
通院している病院でフィリピン人女性が、医師に暴力を振るう事件に遭遇し、彼女の幼い息子ミノを連れて帰ってしまう。
同じ建物に住むドフンとティナも、ソヨンと同じような社会的弱者たち。
彼らと一緒にミノを育てながら、細々と売春を続けていた。
同業女性に淋病になったことを口外され、別の公園で売春をはじめると、昔の客ジュウと偶然出会い、話をするようになる。
彼から、羽振りが良かった”背広のソン”さん”が、脳卒中で寝たきりになったことを教えられる。
ソヨンは、お見舞いに行った病院で、家族にも冷たく扱われる様子を目撃。
自分では自殺することさえ出来ないと苦しむソンさんに頼み込まれるまま、農薬を飲ませ、殺害してしまう。
チュンスという顧客も、認知症になり家にこもりきりの生活をしていた。
ソヨンはジュウに頼まれるまま、山での投身自殺も手伝ってしまう。
最後に自殺ほう助したのは、ジェウさん。
妻にも息子に先立たれ、孤独な彼は高級ホテルで服毒自殺を計画していた。
死ぬ間、彼の隣で寝ていて欲しいと頼まれ、睡眠薬を飲むソヨン。
気が付くと、ジュウさんは亡くなっていた。
ジュウさんからもらった大金のほとんどを寺に納め、残りのお金でドフンとティナとミノを連れ、臨津閣に旅行へ行く。
その夜、ティナの店にいたところで、警察に逮捕されたソヨン。
警察は、ジュウさんが死ぬ前に、銀行から大金を引き出していたことから、ソヨンにたどり着いていた。
逮捕されたソヨンは、動揺もせず、老人ホームにも入れない自分は、3食つきの刑務所で暮らすわと言い、その後、刑務所内で亡くなってしまう。
~おわり~
感想
栄養ドリンクのバッカスを売りながら、売春を持ち掛けるバッカス・レディ。
公園に集まる行き場のない独居老人をターゲットにしているという。
映画のように、公園近くの安モーテルで、3000円程度で…ということらしい。
実在するということにまずショックを受けた。
売春のシーンは、痛々しく見えたが、昔の客とのシーンでは、仕事としてプライドを持っているようにも見えた。
ソヨンさんは、流れるまま人生を受け入れてきたのかもしれない。
そして、頼まれるがままに自殺ほう助をしてしまう。
逮捕後も、淡々と裁判を受けているのだろうと想像していた。
3食付く刑務所で暮らすのも良いかも…とタバコをふかしながらうそぶき、パトカーに乗っている表情が、見事だった。
ラストで、死因は不明だが、獄死し、運ばれていく。
死に顔が穏やかだったように見えたのが、せめてもの救い。
同じ女性として、中年女性として、身につまされる作品だった。