映画とドラマとロケ地

映画や海外ドラマの撮影地の紹介+レビュー

ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ The United States vs. Billie Holiday (2021)

ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(字幕版)

WOWOWより抜粋

1947年、当時の米国では珍しい、白人と黒人が同席できるNYのナイトクラブで満場の聴衆を熱狂させ、絶大な人気を博していた黒人ジャズシンガーのホリデイ。彼女の影響力を恐れる政府は連邦麻薬取締局のアンスリンガー長官に、黒人捜査官ジミーを囮にして彼女のもとに送り込ませる。やがてホリデイは麻薬所持の現行犯で逮捕され、1年間の懲役刑を送る一方、ジミーは次第に連邦麻薬取締局のやり口に嫌気が差すようになり……。

以下ネタバレ注意

 

原作「Chasing the Scream」

Chasing the Scream: The First and Last Days of the War on Drugs麻薬と人間 100年の物語

原作は、ヨハン・ハリ氏の著書「麻薬と人間 100年の物語(邦題)」。

 

奇妙な果実

黒人リンチの実態を告発する名曲「奇妙な果実」。
公民権運動の黎明期の1940年代、政府はこの歌が公民権運動を扇動すると危険視し、「奇妙な果実」を歌い続けるビリー・ホリディは、FBIからマークされることになる。

この歌の作詞・作曲は、アメリカ出身のユダヤ移民であるAbel Meeropol氏。
教師をしながら、ルイス・アランという名前で、詩や歌を制作していた。
Lynching of Thomas Shipp and Abram Smith※閲覧注意)の事件の写真を見たことがきっかけで、作られた歌だと言われている。

Meeropol夫妻は、ソビエト連邦のスパイ事件"ローゼンバーグ事件"で死刑となった夫妻の2人の息子マイケルロバートを養子にしたことでも有名。


ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実

Lady Sings the Blues(1972年)
ダイアナ・ロス主演の伝記映画。
第45回アカデミー賞で5部門ノミネートされる等、高い評価を得た作品。

 

あらすじ

1947年
夫:ジミー・モンロー(密売人)
マネージャー:ジョー・グレイザー
ビリー・ホリデイが歌う「奇妙な果実」は人種差別の悲惨さ歌い上げ、公民権運動に大きな影響を与えていた。
夫とマネージャーは、FBIからの圧力を恐れ、演奏リストから「奇妙な果実」を削除するよう説得。

FBI
連邦麻薬局長官:Harry J. Anslinger 麻薬厳罰化キャンペーン

ビリー・ホリデイは、脅威であり、彼女の歌が誤った思想を助長すると訴える。
「奇妙な果実」の歌を止めるよう警告するも、ビリーは歌い続けていた。
歌での逮捕は出来ないため、麻薬の容疑での逮捕を目指す。

逮捕
FBI捜査官:Jimmy Fletcher(ジミー・フレッチャ)潜入捜査でビリーに近づく。
ビリーの薬物使用を目撃し、ビリーと恋人のJoe Guyを薬物使用・所持で逮捕。
ビリーは、懲役一年の判決に。

ジョン・レヴィ
ベーシスト(二流ギャング)
出所後、ニューヨークでの労働許可を没収され、クラブで歌うことが出来なくなる。
ジョン・レヴィから、関係者にお金を支払えば、クラブで歌えるようになると言われ、関係がスタートするも、稼ぎのほとんどをレヴィに吸いあげられてしまう。
最終的に、レヴィによって濡衣を着せられ、FBIに逮捕されてしまう。
しかし、裁判で捜査官であるフレッチャーが、ビリーの冤罪を証言し、釈放となる。

ジミーとの関係
ジミーは、長官からの命令で、ツアー中のビリーに近づくことに。
メンバーに疑われたジミーは仕方なくヘロインを打つことで、ツアー同行を許される。
その後、ビリーと恋に落ちるが、薬物依存から抜けられないビリーから別れを告げられる。
ジミーは職場に戻るが、管理課に異動させられていた。

成功と破滅
ビリーは、ルイ・マッケイと結婚。
1954年には、念願のヨーロッパ・ツアーを実現し、大成功となる。
しかし1956年、ビリーはルイ・マッケイと共に麻薬不法所持で逮捕されてしまう。
ビリーの体調は悪化し、夫ルイはビリーから離れ、ジミーがビリーを支えるように。

FBIのハリー・J・アンスリンガーは、夫ルイと共に録音機を持ち込み、病室のビリーに「奇妙な果実」を歌わなければ、FBIはもう追わないと説得するが、ビリーは「屈服など出来ない。黒い尻を舐めな。」とアスリンガーを追い払う。

ラスト
1959年7月17日(朝3時10分)ビリー・ホリデイ(44歳)死去
麻薬捜査官は、ヘロインを発見したとし、亡くなっているビリーを逮捕する。
その後、アスリンガーは、薬物撲滅に尽力したとケネディ大統領に表彰される。
ジミーは、アスリンガーに協力したことを後悔し続けていたという。
「奇妙な果実」は、ビリーが亡くなった後、グラミー賞殿堂賞に選出され、高い評価を受ける。
~おわり~

 

エメット・ティル・反リンチ法

映画のラストでは、2020年現在、この法案が可決されていないと紹介されていたが、2022年に122年を経て、ようやく連邦法が成立する。

ひとこと

ジミー・フレッチャーに関しての情報が少なく、映画はフィクションの部分が多いと考えたほうが良いだろう。
ネット上での情報だけだが、ジミーが実際にビリーのもとに送り込まれたことは事実で、彼女を庇う行動を取ったようだが、恋人関係に関しては不明。
ビリーの自伝が出版された際、ジミー宛てに手紙(メモ)を書いており、彼女もジミーを人として信頼していたようだ。

ビリー・ホリデイを演じたアンドラ・デイに対する評価は高いが、映画そのものに関する評価は普通。個人的には、後半が少々尻すぼみに感じた。