映画とドラマとロケ地

映画や海外ドラマの撮影地の紹介+レビュー

ラッキー LUCKY (2017)

ラッキー(字幕版)

WOWOWより抜粋

アメリカ西部の荒れ果てた町で、わが道を頑固に貫き通しながら自由気ままに生きてきた90歳の独居老人ラッキー。朝起き出すと、たばこをふかしながら体操に励んだ後、近くのダイナーまで出向いてのんびりコーヒーを飲み、夜にはやはり行きつけのバーに出向き、なじみの常連客たちと軽口をたたき合う。そんな日課を繰り返してきたラッキーだったが、ある日突然失神して倒れ、自分の身に死が近寄っていることを実感するようになる。

以下ネタバレ注意

 

最後の作品

主人公のラッキーを演じたハリー・ディーン・スタントンさんは、2017年9月15日に91 歳で老衰でお亡くなりになられている。この作品のアメリカでの公開は、2週間後の9月29日だった。
主人公の友人ハワードを、映画監督のD・リンチが演じているが、ハリー・ディーン・スタントンはリンチの作品に多数出演している。

 

赤い河の谷間

日本では「赤い河の谷間」という歌で有名な、アメリカのフォークソング“Red River Valley ”。映画の中では、ハーモニカ演奏のBGMが流れていた。
これは、主人公を演じたハリー・ディーン・スタントンが、“Twin Peaks: The Return”(2017)でこの曲を演奏していたシーンにちなんだ曲だと思われる。
ちなみに、日本では西部の大自然を歌う内容になっているが、原曲は白人男性とインディアン女性とのラブソングだ。

 

ラッキーとの共通点

映画の主人公ラッキーと、彼を演じたハリー・ディーン・スタントンには共通点がある。あえて本人の経歴に合わせた設定にしているのだろう。
ケンタッキー州出身
第二次世界大戦で沖縄へ行き、コックとして働いていた。
WikipediaによるとLST-970 (戦車揚陸艦)でコックとして働いていたと書かれている。

 

謎の赤い光のシーン

映画中盤、ポーリー(Paulie)が謎の赤い光に照らされ、姿を消すシーン。
ラッキーに呼びかけられ振り向いたポーリーは、楕円形のフレアの中心にいるように映っている。
これは、ポーリー演じるジェイムズ・ダレンが出演した「タイムトンネル」(The Time Tunnel)の楕円の時間旅行の装置をほのめかしているようだ。
日本でも放送されていた作品。

 

ロケ地

町を歩くシーン

カリフォルニア州ピルー
ラッキーが街を歩くシーンで良く映っていた場所。
左手の壁の“⇒PARKING”というペイントは、映画でそのまま映っている。

ペットショップ

店の前にいる犬(フィオナ)を撫でるシーン。

 

 

ねたばれあらすじ

ラッキーの日課
カリフォルニア州ピルーにある小さな砂漠の街に住むラッキー。
彼は神を信じず、わが道を頑固に貫き通し、自由気ままに生きてきた。
そんな彼の日課は、朝ヨガをし、タバコを吸い、牛乳を飲んだ後、徒歩で町のコーヒーショップへ向かうこと。
店では、コーヒーを飲みながら新聞のクロスワードを解き、近くのコンビニで買い物する。オーナーのビビから、息子の10歳の誕生日パーティーに誘われる。


ラッキーは、エレインズというバーへ行き、ブラディ・マリーを注文。
友人のハワードは、ペットのルーズベルト大統領という名のリクガメが脱走し、落ち込んでいた。

病院へ
翌朝、ラッキーはコーヒーポットの点滅に注目しているうちに床に倒れてしまう。
クリニックに行くが、医師から診断結果に異常はなく、タバコを吸っているが肺も問題ないと告げられる。
コーヒーショップで、倒れた話をすると、そこにいる全員から心配されてしまう。
その夜、テレビを観ていたラッキーは、友人に電話をし、子供の頃の話をする。

エレインズ
ラッキーは、常連客のポーリーから、結婚の経緯を聞かされる。
ラッキーは、結婚も、女性と長続きしたこともなかったと回想する。
その後、店内でハワードが、弁護士と遺言書の相談をしているのを小耳にはさみ、彼がペットのリクガメに全財産を残すと言っているのを聞き、驚愕する。
ラッキーは、弁護士のボビー・ローレンスにハワードが騙されているのではないかと考え、弁護士に喧嘩をふっかける。

数日後
コーヒーショップの従業員のロレッタが、ラッキーを心配し家を訪問する。
その後、店に行き、コーヒーを飲んでいると、ローレンス弁護士が現れる。
弁護士は、過去にゴミ収集車に轢かれそうになった時のことを話し、予期せぬ事態に備えるためにより多額の保険に入ったと話す。
その後、ペットショップの店番をする犬を撫でていると、店内に案内され、生餌のコオロギの箱を購入して持ち帰る。

退役軍人
別の日、コーヒーショップで、海兵隊の退役軍人を見かけ声をかける。
2人は、第二次世界大戦の話をし、ラッキーは戦車揚陸艦のコックという比較的安全な仕事に配属されたことから“ラッキー”というニックネームがついたことを明かす。
フレッドは従軍した沖縄戦の話をしはじめ、沖縄の地元民らがアメリカ兵に殺されるまえに自ら死を選ぶ様子を伝えた。
戦いの中で、フレッドは地元民のある少女と遭遇する。凄惨な状況の中、ほほ笑む少女に動揺したフレッドだったが、仏教徒ゆえ死を受け入れ、微笑んだのだと説明する。


誕生日パーティー
コンビニのオーナーのビビの息子の誕生日パーティーに出席したラッキー。
料理や音楽を楽しんだラッキーは、突然スペイン語で「Volver Volver 」を歌い始める。
突然の出来事に皆唖然とするが、すぐにマリアッチらが演奏に加わり、ラッキーの歌でパーティーはさらに盛り上がった。

エレインズで
ラッキーは、パーティーがあった夜、エレインズでいつものブラディ・マリーを飲んでいた。ハワードから、リクガメは見つからないが、彼を自由にする時期なのだと考え直したと聞かされる。
タバコを吸おうとするラッキーは、店主エレインから注意されるが、ラッキーは抵抗し宇宙の真理を語りだす。「すべては無くなり、真っ暗な空(くう)へ。そこには無しかない。」と語る。
エレインに「無なら、どうするの?」と尋ねられたラッキーは「微笑むだけさ。」と答え、タバコに火をつけバーを去る。

ラスト
翌朝、ラッキーはいつもの朝を迎えていた。
町を歩き、砂漠にある背の高いサグアロサボテンを見上げて、タバコに火をつける。
カメラに向かい微笑み、立ち去っていく。
ラッキーが去った後、リクガメが歩いている様子が映る。
~おわり~

 

 

 

余計なひとこと

90歳の頑固な独居老人が主人公と知り、楽しみにしていた。
なんせ、主人公を演じるのは、激渋俳優ハリー・ディーン・スタントン
この作品を最後にお亡くなりになられたが、それでも、頑固じじいラッキーは今も砂漠の寂れた町をよぼよぼと歩いていると思っていたい。

オリンピック等、大きなスポーツイベントで「人々に勇気と感動を!」なんて台詞をよく聞くが、感動はまあ良いとして勇気を与えるってどういうこと?といつも感じている。〇時間テレビのマラソンに一切感動しないひねくれ者の私の意見は少数派だろうが、勇気を与える…というならば、こういう映画ではないかと思う。

1人だが孤独じゃないと言う主人公ラッキー。
無神論者で未婚者で頑固ものだが、転倒したことで死を感じ、心配し家を訪ねてくれたコーヒーショップの若い店員に「怖いんだ」と告白する。
それでもラストで、消えゆく時は微笑むだけだと言って、店を出ていく。
死ぬことが怖くない人なんて、この世にいないだろう。
それでも、ラッキーのように死に直面したら、その時は全てを受け入れて微笑むことにしたい。ラッキーから少し勇気をもらった。