映画とドラマとロケ地

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アテナ Athena (2022)

Netflixより
ひとりの少年が殺害された悲しい事件をきっかけに、激しい戦いの舞台と化したアテナ団地。その争いの渦中には、被害者である少年の兄たちがいた。

以下ネタバレ注意

 

仏17歳少年射殺事件からの暴動

2023年6月27日、フランスのパリ郊外で17歳のアルジェリア人少年が、検問中の警察官に至近距離から撃たれ死亡するという事件が起こり、警察への抗議から暴動に発展、フランス全土6月30日夜、バスと路面電車の運行が停止するまでになった。
この2022年の映画と似た事件が起こったことを知り、Netflixで映画を観始めた。

弁護士役

映画冒頭で登場する弁護士役では、本物の弁護士Yassine Bouzerou氏が演じている。Bouzerou弁護士は、フランスでは著名な弁護士のようだ。
上記で紹介した仏17歳少年の射殺事件で、Bouzerou弁護士は亡くなった少年家族の代理人になったと知り驚いた。上記Wikipediaにも記載あり。

 

ロケ地 ウサギ公園

Le Parc aux Lièvres(直訳:ウサギ公園)
2023年初めに改修工事が予定され、住民がいなくなった時期に撮影出来たという。
上記記事には、監督の撮影時のインタビューが掲載されている。





ねたばれあらすじ

弟の死
アルジェリア系フランス人の空挺部隊に所属するアブデル中尉は、マリから帰国し、13歳の弟が病院で死亡した件について警察署の外で記者会見を行っていた。現場で撮影された動画から、3人の警察官が彼を殴打している様子が映っていた。
アブデルは、静かに弟の死を悼んで欲しいと訴えるが、アブデルの弟カリム率いる若者グループが、記者会見中、火炎瓶を投げて妨害し、警察署を襲撃し始める。

暴動
カリムらは、警察内で暴動を起こし、武器が入ったロッカーを盗み、警察のバンに乗せ、アルジェリア系が多く住む”アテナ”と呼ばれる集合住宅へ戻る。
アテナの入り口にバリケードを作り、立てこもりはじめる。
鎮圧に向け、CRS機動隊が出動するが、用意していた花火や火炎瓶などで応戦していく。

アテナの住人達
アブデルは、弟の追悼式のためにアテナに戻る。
弟カリムを説得しようとするが、カリムは納得しない。
異母兄弟の長男モクターは、ドラッグディーラーをしており、警察に没収されないよう密輸品等を隠すため、アテナ内に穴を掘り始める。
アブデルは、障がいを持つセバスチャンを保育園に保護した後、住人達を避難させるため先導するが、機動隊と揉め大勢の住民と共に逮捕されてしまう。

人質
夜、機動隊がアテナに攻撃を始めるが、返り討ちにあい、部隊はすぐに撤退する。
その混乱の中、ジェロームという若い士官が拘束されてしまう。
若者らは、警察に人質になったジェロームの映像を送り、弟を殴った警官3人を特定しなければジェロームを殺害すると脅迫する。
アブデルはすぐに釈放されアテナに向かうが、暴動を治める方法は無く、さらにジェロームを救出しようとするが、カリムに見つかってしまう。

アブデルの怒り
アテナに侵入しようとした警官たちに攻撃しようとしたカリムは、アブデルの目の前で射殺され、持っていた火炎瓶の火で遺体が火だるまになってしまう。
カリムの死で激怒したアブデルは、自らジェロームを人質に取り、司令官に連絡をし、弟を殴り殺した警察官の名前を要求する。
司令官は、ビデオに映っているのは本物の警察官ではないと主張し、特殊部隊がアテナに向かっていると警告する。
アブデルは、ジェロームに向け発砲するが、あえて外して撃ち、ジェロームを射殺しなかった。
特殊部隊が到着し、抵抗を続けていた若者らもアテナの外に投降する。アブデルは建物内に残り、その後、セバスチャンが仕掛けた爆弾で建物が爆発し、アブデルは死亡する。

ラスト
アブデルとカリムの弟の暴行時の音声と、倒れている少年の映像が映る。
犯人らはバンに乗り込み、森へ向かい、警察の制服を脱いだ後、燃やして立ち去っていた。
彼らは、警官に変装した極右勢力(GUD)で、人種的な不安を煽るために意図的にアルジェリア人の少年を暴行したことが明らかになる。
~おわり~

 

 

ひとこと

母国フランスでは否定的な意見が多いというが、国際的には評価が高いこの作品。
映画冒頭から一瞬にして、観ている側も暴動に巻き込まれていく。
ギリシャ神話に登場する戦いと都市の守護神であるアテナがタイトルになっており、ギリシャ悲劇のような結末を迎えることになる。
カメラワーク、スピーディーな展開、恐ろしいことが目の前で起きているのだが、妙にカッコいいと思ってしまう映像で、とにかく目が離せない。
観ていない方は是非!お勧めします!

 

ネタバレトリビア

映画のラストに登場する犯人の首元に、ケルト十字の刺青があった。
これは、現在、白人至上主義やネオファシズムらのシンボルとして使用されているため、要注意マークだ。
フランスでは極右勢力が使用しており、あの刺青=極右勢力の仕業、ということが判明する。
そして、警察のふりをして、アルジェリア人の子供に暴行することで、移民の怒りを爆発させ、暴動を故意に引き起こそうとしたのではないかと推測できる。

 

セバスチャンって何者?

始めに登場したシーンでは、イヤホンをしながら花壇に花を植えていた。
何となく、障がいがあるのでは?と思わせる様子だった。
アブデルは、彼の素性を知っているようで、静かな場所に避難させたいと考え、保育所に連れて行っていた。
その次のシーンでは、アブデルに「手を貸せ」と言われ、表情が変わったセバスチャン。警察から運んできた武器のロッカーを開けるために、お手製ミニ爆弾でいとも簡単にロッカーを壊していた。銃を取り出す仕草からも、武器の扱いにも手馴れていることがわかる。

最後には、集合住宅にあるガスボンベ等を集め、簡易爆弾を設置していた。
ここで思い出すのは、フランスのアルジェリア人の爆破テロ。
フランスのレビューサイトで、セバスチャンを“元テロリスト”と説明しているのを見かけたが、映画を再確認したがそのような説明は無かった気がする。

個人的には、爆発物のスペシャリストの元軍人だが、戦争や爆発に巻き込まれたりしたことで、PTSD等何等かの障害が残ったのではないかと想像した。