独裁政治の爪あとがいまだ残る1980年スペイン・アンダルシア地方。湿地帯の小さな田舎町で、祭りの最中二人の少女が行方不明となり、やがて死体で発見される。彼女たちは強姦され、凄惨な拷問を受け、そして殺されていた。事件の捜査を担当するのは、首都マドリードから左遷されてきた若く血気盛んな刑事ペドロと、ベテランのフアン。ほどなく二人は、過去にも同様の少女失踪事件が起こっていることを突き止める。しかし、捜査を進めていくうちに明らかになる、貧困、差別、汚職、小児性愛に麻薬密売、小さな町にはびこる幾多の悪意が刑事たちの行く手を阻む。そんな中、また一人少女が姿を消す。救出までのタイムリミットはわずか。二人は少女の命を救い、事件の全貌を暴くことができるのか?
ネタバレあり
湿地帯の田舎町という設定で、オープニングからジメッと重苦しい空気が漂う。
左遷されてきたという刑事ペドロが、ベテランのフアンという暴力刑事と事件を追っていくのだが
何かと意味深なシーンが続き、いい意味で観ている側を騙していく。
フアンがとにかく冒頭から怪しい。
捜査の邪魔をしたり、嘘をついて誤魔化そうとする町人には暴力で口を割らせている。
アメリカの作品で良く観る「町を牛耳る(暴力)保安官」といったところか。
暴力を乱用しながら捜査するわりに、冒頭、霊媒師にアドバイスをもらいにいくという
へんてこりんな展開も意味深といえば意味深。
行方不明の姉妹の死体はすぐに発見されるが、被害者の母親は自分の夫が
事件に関わっているでは?と考え、刑事に証拠の品を次々渡してくる。
(姉妹らが売春をしていた証拠写真、少女らの通帳。)
父親はフアンに殴られ、実は大量の麻薬を見つけ、それを売った金で車を購入したと白状。
姉妹殺害は、父親に対する麻薬組織からの報復か?とも考えさせる。
最終的に都会での就職を斡旋すると言って少女らを騙してきた男が捜査線上に浮上。
真犯人逮捕!
と思いきや、フリンが何故だか犯人メッタ刺し。
正当防衛ではない確信犯。
やっぱり、このオジサン何か隠してる!
そして、事件解決の手柄をペドロに与え、ペドロはマドリードへ栄転に。
家族のためにも、こんな街からとっとと出てマドリードへ戻れというフリン。
疑っていたけど、フリン、実はイイ奴? いや、まさか。
そんな時に、ペドロにある写真を見せる新聞記者。
「別名:カラス」
でも、真犯人<マドリッドへの栄転、が勝ってしまったペドロ。
そして、また一人、この街の秘密に口をつぐむ人が増えてしまった・・・。 ~ fin ~
独裁政治の爪あとが残る、という貧乏な田舎町では
弱い物を食い物にしている大人
生きていくために、見て見ぬふりをする大人
汚職に麻薬に売春に
底なし沼のような町から誰も出ていけない。
正義感あふれるペドロは、底なし沼に引きずり込むと、逆に面倒だから
さっさとマドリードへ戻そうと、強引に栄転させ、結果町から追い払われたというのが真実だろう。
居座って、真相追及していたら、殺されている可能性もありそう。。。
最近多い、悪人野放し「さて、この後どうなる?」という、観る人に考えさせるラスト。
雰囲気も重視している映画は、こういう結末は、余韻が残って良い意味でズルい。