映画とドラマとロケ地

映画や海外ドラマの撮影地の紹介+レビュー

灼熱の魂 Incendies (2010)

灼熱の魂 (字幕版)

公式サイトよりあらすじ抜粋

初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌとシモンにも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった......。

以下ネタバレ注意

 

Souha Bechara

ジャンヌとシモンの亡き母ナワル・マルワンは、レバノン人活動家Souha Becharaの活動をベースにしている。
レバノン軍(SLA)の指導者Antoine Lahadの暗殺未遂事件を起こし、拷問センターと呼ばれているキアム刑務所に10年間収監され、のち釈放される。
10年間のうち6年間は狭い独房に入れられてたという。
釈放後は、スイス人男性と結婚し、二人の子供の母親に。



オイディプース(ネタバレ注意

有名なギリシャ悲劇も映画のベースになっている。
ナワル・マルワンが、長男を出産するシーンで、祖母が生まれた赤ちゃんの足に刺青を入れていたことが、映画の重要なヒントに。
このギリシャ神話を知っている人は、気づいてしまっていただろう。

テーバイの王ラーイオスは、子供を作るべきではないという神託を受けるが、妻イオカステーとの間に生まれた男児を殺せず、踵をブローチで刺し従者に山中に置き去りにするよう命じる。しかし、従者は羊飼いに子供を託し、羊飼いは子供が出来ないコリントス王ポリュボスに渡してしまう。オイディプースという名前は、”腫れた足”という意味だという。



コラッツ予想(ネタバレ注意

ジャンヌが、数学の授業で教えていたのがコラッツ予想だった。
これも、映画の重要なヒントになっていたことを、最後でようやく気づいた。

コラッツ予想
ドイツの数学者Lothar Collatzによって唱えられた未解決問題。任意の自然数に対し、奇数であれば3をかけて1を足す、偶数であれば2で割るという操作で、どんな自然数必ず1になるというものである。

”One plus one, does it make one?”



ロケ地

母のアパート(入口)

シモンがこの階段を上がるシーンがある。
入口の“175”は、そのまま。

 

プール

Parc du Pélican wading pool(モントリオール

 

イード・アダールを訪ねるシーン

Faculty of Foreign languages(ヨルダン大学)
ダレシュ大学でフランス語を学んでいた母の情報を求め、教授の旧友サイード・アダール氏に話を聞きに行く。

 

ニハド・ハルマニの自宅

ジャンヌとシモンが母からの手紙を渡すシーン。

 

ひとこと

重いテーマの作品だが、観終えた後、晴れやかな気持ちになるのは何故だろう。
母ナワルの“赦し”で、おぞましい過去が浄化されたように感じたからだろうか。
母の秘密を解き明かした双子のジャンヌとシモンも最後は良い表情をしていた。
数々の映画賞を総なめにした作品だけあり、濃厚な2時間の大河ドラマ
映画のメッセージ通り、世界は戦いを止め、共に生きる道を見つけるべき。