映画とドラマとロケ地

映画や海外ドラマの撮影地の紹介+レビュー

フェイブルマンズ The Fabelmans (2022)

フェイブルマンズ (字幕版)

WOWOWより抜粋

科学者の父バートと、音楽家でピアニストの母ミッツィの間に生まれ育ったサミー。1952年、まだ幼いサミーは両親に連れられて初めて映画館を訪れ、「地上最大のショウ」を鑑賞。以来、映画に魅せられるようになった彼は、自らも8ミリカメラを手に、映画作りに熱中。ところがある日、サミーは、キャンプの様子を記録したホームムービーの映像の中に、ある思いも寄らぬ出来事が映し出されているのを発見し、深い衝撃を受ける。

以下ネタバレ注意

 

地球最大のショウ(1952)

The Greatest Show on Earth
サミーが両親に連れられて観にいった映画は、1952年の名作「地球最大のショウ」。
第25回アカデミー賞5部門にノミネートされ、作品賞と原案賞を受賞している。
この作品の大脱線事故のシーンに衝撃を受けたサミーは、そのシーンを再現するために映像制作にのめりこんでいく。

 

服を破るシーン

映画の中で、サミーの大叔父のボリス・シルドクラートが寝る前に服を破いていました。その後、サミーもパジャマを破いていました。
これは、愛する人を失ったことの悲しみを表すために衣服を引き裂くという伝統なのだそう。
聖書の中にも、悲しみの表現として服を破るという場面が沢山あるようです。

 

ロケ地

映画館のシーン

オルフェウム・シアター The Orpheum Theatre
映画冒頭の映画館のシーン

 

自宅外観

クリスマスのイルミネーションを飾る家が並ぶ中、ユダヤ人であるサミーの家はイルミネーションが無く暗い外観、というシーン。

 

キャンプ旅行のシーン

Golden Oak Ranch(牧場)

 

ベニーからカメラをプレゼントされるシーン

カメラ店のシーン

 

海辺のシーン

Zuma Beach
Ditch Dayに海に行くシーン。

 

学校のシーン

Susan Miller Dorsey Senior High School

 

デイヴィッド・リンチ!?

名監督のジョン・フォードを演じたのが、意外にもデイヴィッド・リンチ
短いシーンだが、インパクト大!流石。

 

ねたばれあらすじ

主人公:サミー(サミュエル)・フェイブルマン
父:バート(エンジニア)
母:ミッツィ(ピアニスト)
妹:リジー ナタリー リサ
1952年1月の夜、ニュージャージー州ハードン・タウンシップに暮らすユダヤ人夫婦は、幼い息子サミーを連れ、映画館で「地球最大のショー」を観に行く。
電車の脱線事故のシーンに心を奪われたサミーは、ハヌカの日のプレゼントに模型セットを希望し、模型を使い映画の脱線事故のシーンを再現することに夢中になる。

8ミリカメラ
母ミッツィは、サミーの望みを理解し、夫の8ミリカメラを渡し、撮影を許可する。
サミーは、カメラでの撮影に夢中になり、妹達も撮影に参加するようになる。

アリゾナ
1957年、父バートは、アリゾナ州フェニックスでの新しい仕事のオファーを受け、引っ越しを決意。ミッツィの強い希望で、バートの助手でフェイブルマン家とも家族ぐるみで親しくしているベニーも同行することに。
その数年後、サミーはボーイスカウトの友人たちとの映画作りに夢中になっていく。
一家は、ベニーも同行し、夏休みにキャンプ旅行へ出かけ、サミーは旅行の様子を撮り続けていた。

伯父ボリス
旅行から帰ってすぐにミッツィの母親が亡くなり、ミッツィは落ち込んでしまう。
父バートは、ミッツィを元気づけるために、旅行の映像を編集してほしいとサミーに頼むが、サミーは自分が計画した映画製作のスケジュールがあると断る。
しかし、バートは映画製作を単なる趣味ととらえ、家族の映画のほうが重要だと訴える。
翌朝、母方の大叔父ボリスがフェイブルマン家を訪ねてくる。彼はサーカスのライオンの調教師からハリウッド映画界へ転身した人物。ボリスは、芸術を取るか家族を取るかで、この先悩み続けることにだろうとサミーに告げる。

母の浮気
サミーは、父親に命じられるままキャンプ旅行の映像を編集し始めるが、映像から母ミッツィと父の助手であるベニーおじさんが愛し合っていることに気づいてしまう。
誰にも言えないまま、母とベニーに反抗的な態度を取り続けるサミー。
サミーの態度に激怒した母は、サミーの背中を叩き、カッとなったサミーは浮気の証拠になる母とベニーの映像を母に見せ、気が動転した母に「秘密は守る。」と告げる。

カリフォルニア州サラトガ
父バートは昇進し、一家はカリフォルニア州サラトガに引っ越すことに。
ベニーは、フェニックスに残ることが決まり、引っ越しのお祝いにとサミーに新しいカメラをプレゼントする。しかし、母との関係を知っているサミーは、35ドルをベニーに支払い、カメラを受け取るが、決して使わないとつくえの引き出しに閉まってしまう。

いじめっ子
引っ越しし、新しい学校に登校すると、同級生で体育会系の人気者ローガンとチャドに絡まれ、人種差別的な発言をされる。抵抗するが、すぐにボコボコにされてしまう。
しかし、そのイジメが縁で知り合ったモニカと付き合い始めることに。
モニカは敬虔なクリスチャンだったが、すぐに家族とも親しくなり、夕食に招待するまでになる。
Ditch Dayを撮影して欲しいとモニカに頼まれ、サミーはカメラで撮影し続ける。

離婚と別れ
賃貸住宅から新居に引っ越すが、父と母は離婚を決意し、子供達へ話をする。
サミーは、プロムで恋人のモニカに愛の告白をし、高校卒業後に一緒にハリウッドへ行って欲しいと頼むが、大学進学を希望するモニカにフラれてしまう。

Ditch Day Movie
プロムの最後に、サミーが編集したDitch Dayの映画を上映することになるが、モニカにフラれたサミーは、失意の中、映像を流すことに。
映画では、ローガンを美化し、チャドを笑いものにする内容になっていたが、会場は大盛り上がりになる。
サミーをいじめの標的にしていたローガンは、自分を美化した映画に困惑し、サミーに詰め寄るが、お互いを理解するきっかけになる。そこに、激怒するチャドが現れるが、ローガンが止めに入り追い払ったことで、ローガンとサミーに絆がうまれる。

映画への情熱
母はサミーに、ベニーへの愛を正直に話し、サミーに映画への愛を諦めないようにと話す。
その後、サミーは大学に進学し父と共にハリウッドで暮らし始めるが、大学への情熱は無く中退したいと父に訴える。
父はサミーの映画への情熱を受け入れ、サミーは大学を中退。
映画業界で働き始める。

ラスト
CBSのプロデューサーのバーナード・ファインは、サミーが映画製作に興味があることを知り、名監督のジョン・フォードに会えるようセッティングしてくれる。
サミーは、憧れの監督からフレーミングに関するアドバイスを受ける。
監督の部屋を出たサミーは、嬉しそうにスタジオのバックロットを歩いていく。
(カメラは、監督のアドバイスに合わせ、地平線を中央にした後、地平線を下に配置し、映画が終わる。)
~おわり~

 

ひとことふたこと

主役はサミー(スピルバーグ監督がモデル)なのだが、母ミッツィが主役の座を奪っていた。芸術を愛する美しい母親役が素晴らしかった。
ミッツィが、ベニーもアリゾナに!と夫に訴えるシーンを観て「もしや」と思ったが、バートの実母ハダサーは、もっと前から2人の関係に気づいていたのかもしれない。最初の頃のシーンを観なおし、改めてそう思った。

ローガンがDitch Dayの映画を観てショックを受けていたことに関し、色々と考えていた。一番最初に思い出したのは「桐島、部活やめるってよ。」で学校の人気者が部活を辞めてしまうという設定。ネット検索してみて、同じように考えていた方が何人かいて嬉しくなった。
ローガンは、学校では部活で活躍し、見た目も美しくヒエラルキーのトップなのだが、サミーを人種差別的発言等でいじめたり、暴行するシーンなどを観て、闇があるだろうとは思っていた。
ローガンは、映画を観た後「サンタクララ郡のどの選手よりも早く走れるのは、そのために一生懸命努力したからだ。(意訳)」と言っていた。映画の中の自分が万能のヒーローのように綺麗に映りすぎて、決して万能ではない自分とのギャップに動揺したように感じられた。サミーを虐めていることが悪いことだともわかっており、恨まれる側の自分をあのように描いたことが最大の嫌味にも感じられたのだろう。
人気者の自分を演じ、トップの座を奪われないように気も張っていたのかもしれない。
単純で前向きな人物であれば、映像の中で輝く自分に満足しそうだが、そうでなかったローガンは、彼なりの悩みがあったのだとも考えられる。
(とはいえ、どんな理由があれ、いじめは許されない。)

 

 

Ditch Day撮影の様子がわかります。
(モニカ役クロエ・イーストさんinstagramより)